『東大現代文で思考力を鍛える』 出口汪(著)

東大現代文で思考力を鍛える『東大現代文で思考力を鍛える』 出口汪 2013.12大和書房

「東大の現代文ほど、面白いものはない
「東大」と聞けば、政治家や官僚などあらゆる分野で権力を握っている人たちを思い浮かべるかもしれない。だが、そんな東大が「現代文」の入試問題で、受験生に提示する問題文には、どれも「反権力・反常識」の主張が根底にあり、私たちの固定観念に揺さぶりをかけるものばかりである。
 実際のところ東大は柔軟な思考ができ、激動する時代に対応できる新しい頭脳を求めているのだ。
そうした頭脳を持った人材を輩出できなければ、日本の大学の頂点に立つ「東京大学」としての存在理由がなくなるからである。
 それならば東大が求めている価値に耳を傾けることで、新しい時代を読み取ることができるのではないか。」

とはじめにの部分で出口は述べています。

過去の東大の現代文の入試問題の中から、著者が選んだ幾つかの文章を題材に考えることの手引書のような体裁で語られています。

序章 東大が投げかける、受験生へのメッセージ
    儚い人生を、私たちはどう生きるか 「夢のように」  福永武彦

第1章 常識に縛られない思考を作る4問
    科学、そして近代文明の全面否定 「異常の構造」  木村敏
   「背後」という世界 「背・背中・背後」  小池昌代
   「本当の論理力」を問う 「流れとよどみー哲学断章」  大森荘蔵
    歴史的真実とは何か? 「反歴史論」  宇野邦一

第2章 現代の問題系を理解する4問
    生命倫理と臓器移植 「問われる『身体』の生命」  西谷修
   「誰のため」の環境問題 「社会哲学の現代的展開」  加茂直樹
    自己とプライバシー 「ポスト・プライバシー」  阪本俊生
    アイデンティティと言語 「ぼくの日本語遍歴」  リービ英雄

第3章 芸術と文化の見方を学ぶ3問
    西洋の美、日本の美 「美しいもの見し人は」  堀田善衞
   「演技」と「人間の本質」 「鈴木忠志演劇論集 内角の和」  鈴木忠志
    一流役者の感情表現 「思想する『からだ』」  竹内敏晴

東大現代文は私たちに語りかける。
深く考えよ。
安易に答えを求めるな。
他者意識を持って、それを論理的に説明する技術を身につけよ、と。