デザイン思考からビジョン思考へ――ビジョン・ドリブンという生き方――

『直感と論理をつなぐ思考法』佐宗邦威 著
 数年前まで論理的思考、戦略的思考が
もっぱら企業社会での中心的存在でした。

生産性、合理性一辺倒の産業社会において
「創発」的という考え方や
デザイナーの作品を作る過程に注目したデザイン思考
というキーワードが世間を賑わすようになってきました。
まずプロトタイプを作って
PDCAサイクルを回して、そこに生ずる問題を改善して
さらにまた現状を捉え直して問題改善を繰り返す仕組みが、
注目されるようになりました。

そして著者はその先に「ビジョン思考」
独自の「妄想」をプロジェクトや事業へと落とし込んでいる人々
が無意識にやっている考え方(=ビジョン思考)を
をモデル化しようと試みる。

「本当に価値のあるものは妄想からしか生まれない」
「妄想」をビジネスの「戦略」にまで落とし込む
そのカギとなるのが、直感と論理をつなぐ思考法、
「ビジョン思考」(Vision Thinking)だ。

■ビジョン思考の4つのサイクル
直感を駆動力にした思考は、このサイクルを描く
イタレーション(反復)

①妄想する Drive ←←
 自分の妄想を形にする
   ↓    ↑
②知覚する Input
 ビジョンの解像度を上げる  ↑
   ↓           
③組替する Jump    ↑
 自分なりの切り口を与える  
   ↓           ↑
④表現する Output
 自分らしい表現に落とす→ →

■「イシュー・ドリブン」から「ビジュアル・ドリブン」へ
 「ティール組織」 
  2014年フレデリック・ラルー『Reinventing Organization』
 =自己分散型組織
  組織外の知も自由に取り込みながら、
  各人が「フラット」にビジョンをつくる

ISSUE-DRIVEN
「どうすれば・・・できるだろうか?」 How might we ・・・?
VISION-DRVEN
「もし・・・・なら、どうなるだろうか?」What if ・・・・?

■デザインの語源
 De-Sign =概念を壊して作り直すこと

 ラテン語の designare de- 「分離すること、はっきりさせること」
     signum 「印・記号」

 組替 = 分解 + 再構築
対象を構成要素に分解したうえで、再び組み立て直す

■VUCAな世界
 Volatility(変動)/Uncertainty(不確実)/Complexty(複雑)/Ambiguity(曖昧)

いまや大半の人は気づいてしまった。
現代のVUCAな世界では、「時代に合わせて変化する」とか
「将来的な変動を予測する」とかいったアクション自体に
もはや意味を見いだせなくあることを・・・。

これからの時代に本当に必要なのは
むしろ変化にあまりとらわれず、これを「受け流す」力ではないかと。

もくじ
はじめに
「単なる妄想」と「価値あるアイデア」のあいだ
――Between Vision and Strategy

「他人モード」にハイジャックされた脳
人も組織も「これがやりたい!」があると強い
あえて論理・戦略からはじめない
ただの直感・妄想で終わらない
すべては「余白のデザイン」」しだい

序章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
――Wander to Wonder
・PDCAが支配する「カイゼンの農地」
・「カイゼンの民」に迫りくる自動化とVUCAの脅威
・「論理」を手に領土拡大を目指す「戦略の荒野」
・どれだけ戦っても得られないもの
・目的の難民たちの新天地「デザインの平原」
・デザイン思考の3つのシンプルな本質
・「有用性」から解放された「人生芸術の山脈」
・4つの思考サイクルの違い

第1章 最も人間らしく考える
――Think Humanly
・人が「自分らしい思考」を喪失する4つの原因
・「余白づくり」がすべての起点になる
・「頭」で考えていては淘汰される。「手」で考えるには? …など

第2章 すべては「妄想」からはじまる
――Drive Your Vision
・根拠なき大風呂敷を嫌う「前年比至上主義」―イシューとビジョン
・「10%成長」よりも「10倍成長」を考える―ムーンショット
・「感情アウトプット」するモーニング・ジャーナリング
・創造の「テンション」を引き出す―魔法の問いかけ …など

第3章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
――Inut As It Is
・知覚力を磨くには?―頭を「タコツボ化」させない方法
・「手さぐり上手」が生き残る―センス・メイキング理論
・妄想を1枚の絵にする「ビジョン・スケッチ」
・モード切り替え力を高める「クラウドハント」の技法 …など

第4章 凡庸さを克服する「組替」の技法
――Jump Over Yourself
・最初は「つまらない妄想」からはじめたほうがいい
・「箇条書き」はアイデアを固定してしまう
・「組替力」を飛躍的に高める「可動式メモ術」
・「アナロジー的な認知」を促す3つのチェックポイント …など

第5章 「表現」しなきゃ思考じゃない!
――Out Put First
・イタレーション(反復)が「手で考える」のカギ
・早めの失敗は儲けもの―「鳥の目」と「虫の目」
・「手で考える」を邪魔するもの―表現の余白づくり1
・記憶力と創造性が高まる「ビジュアルメモ」 …など

終章 「妄想」が世界を変える?
――Truth, Beauty, and Goodness
・改めて問う、なぜ「自分モード」からはじめるのか?
・アーティストの成長に見る「妄想を具体化する技術」の磨き方
・妄想を「社会の文脈」から問い直してみる―真・善・美

おわりに
夢が無形資産を動かす時代
――Buisiness, Education, and Life