世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」 木村康司 著
西洋美術に興味を持ち各地の美術館を巡ってきましたが、あらためてその誕生した経緯、歴史の歩みを知識として語り伝えられ、おおきな全体の流れを掴み取ることができました。
著者は美術は「感性」で見るものではなく、「理性」で読むものであると述べる。
各時代の歴史の意味、そしてその背景には歴史や価値観、経済状況があるとも。
「男性美」を追求した古代ギリシャの価値感からローマ帝国の発展とキリスト教美術の芽生え。
「目で読む聖書」としての宗教美術のの発達。
修道院の隆盛によるロマネスクの誕生。
フランス王家の思惑と「神の家」ゴシック、「光=神」という価値観。シュジェールのサンドニ修道院の聖堂の建て替えからはじまる。
そしてルネサンス、西洋絵画の古典となったダ・ビンチ、ミケランジェロ、ラファエロ。
マニエリスムを通過して、宗教改革が盛期ルネサンスの終焉をもたらすのである。
北ヨーロッパではオランダ独立とともに市民階級が台頭して、レンブラント、フェルメールに代表される日常の絵画が中心となってくる。
いまや芸術の都パリといわれるフランスであるが、かっては芸術後進国であり、
17世紀にルイ14世による絶対王政が確立され、ヨーロッパを席巻するバロック美術にたいして独自の「フランス古典主義」を生み出す。王立絵画彫刻アカデミーを設立し、「芸術家=知識人」というエリート意識の浸透を図った。ニコラ・プッサンの美術理論が規範となった。
ルイ14世の死後、繊細で華やかな「ロココ文化」が生まれ、王の時代から貴族の時代に逆戻りする。
また王立絵画彫刻アカデミーの「理性」に訴える「プッサン派」に対して、色彩に注目する「ルーベンス派」が力を持ち、感覚における色彩が求められるようになった。
19世紀になり、現実をそのまま描いたクールベの革新性、それに続くマネの絵画の二次元性の強調と社会の描いた試み、後の印象派へとつながっていく。
美術品の背景にある歴史や事件、文化・価値観など楽しく学ばせてもらいました。