日本一小さな農業高校の学校づくり

日本一小さな
農業高校の学校づくり
愛農高校、校舎たてかえ顛末記

品田 茂 著 岩波ジュニア新書 2017.4

読み進むにつれて力づけられ、
こんな体験・気持ちを味わいたいとおもわず感動させられました。

学校法人 愛農学園農業高等学校は三重県伊賀市にあります。
農業を学んでいる高校生60人と教職員家族が暮らしています。
全寮制による有機農業教育を行っています。

https://ainogakuen.ed.jp/feature/


本館校舎の耐震性に不安があり、校舎を建て替えることになりました。
この本には、みんなで話し合い、学習会を開き、
トライアンドエラーを繰り返しながら、
学校をつくっていった取り組みが語られています。

生徒、教職員、保護者、卒業生、地域の方々など、
学校関係者の「話し合いと学習」を通じた学校づくりが語られています。

完成した設計図を選ぶのではなく、設計者そのものを選ぶ。
建築家の「人そのもの」を選考する「資質評価方式」という方式で、
野沢正光建築工房の野沢正光さんが設計者に選ばれました。

再生された愛農高校本館廊下

そしてなんと鉄筋コンクリート造り校舎の3階部分を取り除き、2階建て校舎とすることによって耐震性を高めるとともに、
校舎の内装を木造として再生することになったのです。
減築」という手法です。

そしてこの再生された本館校舎が、日本建築防災協会の耐震改修優秀建築賞を受賞するのです。


簡単に述べられていますが、語り尽くせないいろいろな苦労、それぞれの意見対立を乗り越えてきた軌跡が、背景に浮かんできます。

「太陽光や自然エネルギーの利用は、経費がかかる。愛農高校にとっては贅沢品である」
「木造校舎は弱い。鉄筋コンクリート造りにすべきだと思う」
「設計者を公募することには再考を求める。建築家の商業ベース、建築家の芸術志向に振り回される心配がある」


品田氏は前書きで以下のように述べてられています。

「人生を歩きはじめると、私たちの前にはいろいろなことが登場します。
 それは、受験であったり、解決しなくてはならない課題や問題であったり、
夢や目的の実現を目指した取りくみであったり、いろいろです。
 自分らしく、生きがいを感じながら生きていくためには、
そんな課題、問題、夢や目的に、真正面から取り組んでいくことになります。
 その道のりは大変ですが、いろいろなことを経験できますし、
いろいろな人と出会い、楽しく実りある人生をつくることができます。
 私の学校づくりもおなじでした。
 みなさんが、これから課題や夢と出会ったときに、
この本が少しでも参考になればと願っています。
気軽に楽しんで読んでもらえたら、とてもうれしいです。」