三度目の日本

『三度目の日本 幕末、敗戦、平成を越えて』堺屋太一 

三度目の日本

新型コロナウィルスによる世界的なパンデミック状態に陥り、
発祥国の中国をはじめ、欧米国々でロックアウト(都市封鎖)が行われてきました。
わが国でもやっとのことで政府によって緊急事態宣言が発信され、
不要不急の外出を自粛するように要請されています。
新型コロナの影響で客足が途絶え、業績が低迷したところに対する補助金、保証金問題で色々取り沙汰されている現状です。

以前から言われていた「働き方改革」の問題が、ここに来て必要に迫られて来て
外出抑制からテレワークが現実化してきています。
LINEを通じた調査では5.6%ほどだったとのことです。

昨年2月に亡くなられた堺屋太一氏の遺作
『三度目の日本 幕末1868、敗戦1945、平成2019を越えて』

この新型コロナウィルスなど思いも寄らない時期に書かれた著作ですが、
「はじめに──本当の危機がやってくる
今、日本人は三度目の「敗戦」状態にある。」

という一文ではじまっています。

ここでは「敗戦」とは、
敵国に国土を破壊され、占領されることだけ言うのではなく、
一国の住民集団が、それまで信じてきた美意識と倫理観が否定されること。
価値観が大きく変わること
とされています。

明治維新後の日本は、「強い日本」
戦後の日本は、「豊かな日本」
を目標に進んできました。

そしていま、三度目の日本は「楽しい日本」
を目指してと
堺屋さんは提案されています。

江戸時代の「天下泰平」を良しとした世の中から、
明治維新で、「富国強兵」「殖産興業」と「進取の気性」で進んできた明治以降の日本

1945年(昭和20年)太平洋戦争に破れた日本は物量で負けました。
「規格大量生産」の第三次産業革命に乗り切れなかったから。

安全(平和主義)、平等(理想化されたアメリカの民主主義)
経済成長(スポ根の精神、拠点開発)
が戦後の日本の目標でした。

いま、第四次産業革命
ロボット、AI、ビッグデータの活用の時代になり、
社会の大きな仕組みが変わろうとしています。

いろんな仕事を人間以外がこなすようになり、仕事の時間は短縮されるでしょう。
人間の思考が深まり、楽しみが広がる世界に導いて行きたいものです。

まずはいま進行しつつある新型コロナウィルスによる大きな試練を、
乗り越えてゆかなければなりません。
各自が自分でコントロールできることに集中して、着実に前に進んでいきましょう。
アフターコロナの世の中はどうなるのでしょうか?

オンライン、テレワークが定常化するでしょうか。
今までの当たり前がこれを機会に大きく変わってくると思われます。


目次
はじめに──本当の危機がやってくる

第1章 「二度目の日本」は、こうして行き詰まった
    ──私たちは今、ここにいる

■日本の転換期は1989年
■第四次産業革命の時代に、日本は生き残れるか
■2020年代には、団塊の世代が後期高齢者になる
■戦後官僚主導の5つの基本法則
■業界団体の本部を東京へ
■情報発信基地を東京へ
■無言になる流通
■国民は持ち家を構えろ
■「工場先導性の理論」と「多目的ホール」
■会社人間になりなさい
■規格化された人生
■はがきの名文コンクール──日本人の願いは内向きになった
■「「低欲望社会」という危機

第2章 第1の敗戦──「天下泰平」の江戸時代から「明治」へ
    ──近代日本はどのように幕を開けたのか

■何が社会を決定するのか
■「変わらないことが正しい」とされた江戸の社会
■中央集権と地方分権の二重構造
■安定のなかでの流動性
■「禄」と「権」と「位」の三つ巴
■揺らぎはじめる「天下泰平」
■外国軍に歯が立たなかった攘夷派
■非武装社会・江戸時代の日本
■西洋式軍事組織の誕生と明治維新
■転向者の暗ささえない維新の志士

第3章 富国強兵と殖産興業が正義だった
    ──「一度目の日本」の誕生と終幕

■「ええじゃないか」に見る倫理への反乱
■正義は「勇気」と「進取」
■農地地主と銀行と財閥
■なぜ大インフレが起きたのか
■「二度目の日本」の頂点
■内国勧業博覧会の始まり
■日本の“敗因”は規格大量生産に乗り遅れたこと
■第三次産業革命──半導体とコンピュータの産業革命
■元勲の政治主導から官僚主導へ
■日本の官僚はエリートではない
■時代の下り坂で災害
■なぜ昭和になって、政治家の汚職が取り沙汰されたのか
■民主主義は自由経済の政治版
■官僚は「Aを取ってBを捨てる」ことができない
■無責任体制の確立

第4章 敗戦と経済成長と官僚主導
    ──「二度目の日本」の支配構造を解剖する

■戦時下で思った官僚システムの恐ろしさ
■ジープとチョコレート
■アメリカを美化した平等主義
■貧しさゆえの「成長第1主義」
■復活する戦前官僚──「官僚主導」を確立した田中角栄
■総理は2年で使い捨て
■政治家は、官僚が仕掛けたスキャンダルで潰される
■元凶は小選挙区制度の導入だった
■なぜ晩婚化と少子化が進んだのか
■「天国」日本は、夢と冒険のない社会

第5章 「三度目の日本」を創ろう
    ──2020年代の危機を乗り越えるために

■「天国」に「地獄」の風を
■「楽しみ」を正義に
■日本に巣くう「官僚体制」
■誰が官僚主導を断ち切るか
■第四次産業革命後の世の中
■上達するという楽しみ
■人生に何を残せるか
■「三度目の日本」の姿